前回、「何もしないでAIを導入した組織」では、半年後に組織の97%がAIを使いこなせないままになる、という話をしました。今回は、なぜそうなってしまうのか、その構造的な理由をお話しします。
あなたの家の炊飯器、何ができるか知っていますか
質問です。ご自宅の炊飯器、どんな機能がついているか知っていますか。知っていたとして、使ったことはありますか。
今どきの炊飯器は、玄米も炊けます。パンも焼けます。ヨーグルトまで作れます。ボタンを何回か押すだけ。操作としては、すごく簡単です。
でも、ほとんどの家庭では、早炊きと保温しか使われていません。私もそうです。機能を知らないからではありません。「機能を知っている」ことと「使う」ことの間には、大きな溝があるのです。
Copilotも、まったく同じ構造を持っています。
「何ができるか」からは、人は動かない

「エクセルの表が作れます」「議事録が要約できます」「プログラミングもできます」。こう説明されると、たいていの人は「へー、すごいですね」で終わります。感心はしても、使い始めることはありません。
人が新しい道具を使い始めるのは、「何ができるか」を知ったときではなく、「何がしたいか」から出発して、その道具に行き着いたときです。
例えば、「カレーが食べたい、でも楽に作りたい」という気持ちがまずあって、そこから「炊飯器を使えば楽に作れる」という情報にたどり着く。この順番でなければ、人は動きません。
カレー作りを分解してみる

カレー作りの工程を分けてみます。具材を切る。鍋の前に立って混ぜる。焦げつかないか見張りながら煮込む。
このうち一番の負担は、「鍋の前に立って見張り続ける」工程です。ここに拘束される時間が、カレー作りを面倒にしている正体です。
この「見張るのが大変」という自分の実感があって初めて、「炊飯器ならカレーも作れて、しかも見張らなくていい」という情報が意味を持ちます。機能の説明を先に聞いても響かなかったものが、自分の負担と結びついた瞬間、「じゃあ使ってみよう」に変わるのです。
仕事のAI活用も、同じ順番が必要
Copilotの導入がうまくいかない組織は、この順番が逆になっています。「Copilotにはこんな機能があります」という説明会から入り、社員はその場では感心しますが、自分の仕事のどこに使えるかまでは結びつきません。
前回お話しした「導入後3ヶ月で7割が離脱する」現象も、根っこは同じです。多くの人がまず試すのは、メール要約や議事録作成といった「典型的な使い方」です。これは、いわば炊飯器の早炊きボタンを押しているだけの状態。自分の業務の「見張り工程」に当たる部分、つまり本当に負担に感じている作業に結びついていないので、フィットせず、使わなくなっていきます。
必要なのは、機能の説明会ではありません。自分の仕事を工程ごとに分解し、「これが一番しんどい」という部分を特定することです。そこにAIの機能を結びつけて初めて、「使ってみよう」という気持ちが生まれます。
Copilotは高機能炊飯器。買っただけでは、白米しか炊けない
業務を分解し、どこにAIを結びつけるかを設計する。この工程を飛ばしたまま「多機能な炊飯器」を配っても、誰も早炊き以上のことをしません。
これが、私が繰り返しお伝えしている言葉の意味です。
「AIは技術の問題じゃない。人の問題です。」
では、その「業務を分解する」作業は、誰が、どうやって行うべきなのか。次回は、私がこの分解作業にHRBPとしての経験を使う理由についてお話しします。
自分の業務のどの工程が「炊飯器待ち」の状態か、気になった方へ。1つの業務を入力するだけで、AI親和性をその場で診断できるツールを無料で公開しています。
業務のAI化、どこから始めるか迷ったら
業務ドックが、御社の業務を1件ずつ診てAI化・標準化の優先順位を設計します。まずは無料相談、または業務AI化の無料診断からどうぞ。



コメント