社内でAIの話をすると、必ず出る質問があります。
「AIが間違えたら、どうするんですか」
この質問に「精度は9割です」と答えると、次はこう返ってきます。
「じゃあ10回に1回は間違うんですね」
ここで検討が止まります。止まっているのは精度の議論ではありません。
「間違えたらどうする」は、答えが1つではない
同じ「間違い」でも、起きることがまったく違います。
| 用途 | 間違えると | 気づくのは |
|---|---|---|
| 議事録の要約 | 表現が変。読んだ人が直す | すぐ |
| 過去案件の検索 | 関係ない案件が混じる | すぐ |
| 請求書の金額転記 | ★誤った金額で支払う | あとで・監査で |
| 顧客への回答文の自動送信 | ★誤った内容が社外に出る | 相手から |
上2つは、間違いが読み手の目の前にあります。下2つは、間違いが下流に流れていきます。
同じ9割でも、扱いが変わります。上の2つは9割で十分使えます。下の2つは、9割では絶対に使えません。精度を1つの数字で議論すると、この差が消えます。
見るのは2つだけ

判定に必要なのは、精度ではなく次の2つです。
1. 間違いに、人が気づくか (出力を人が必ず見るか)
2. 気づかないまま流れたとき、戻せるか
この2つで4つに分かれます。
| 戻せる | ★戻せない | |
|---|---|---|
| 人が必ず見る | ★ここから始める | 見て止められるので可 |
| 人が見ない | 条件つきで可 | ★やらない |
「人が必ず見る × 戻せる」から始めます。ここは9割で回ります。間違えても、見た人が直して終わりです。
⚠️ 逆側の「人が見ない × 戻せない」は、精度が99%でも入れません。100件に1件、誰も気づかないまま社外に出ます。ここは精度で解決する問題ではなく、人が見る工程を挟むかどうかの設計の問題です。
「人が必ず見る」を、確かめずに前提にしない

いちばん危ないのは、「最後に人がチェックします」と設計に書いてあるのに、実際は見ていない状態です。
AIの出力がそれらしく整っているほど、チェックは形だけになります。手書きの下書きなら読み直しますが、整った文章は「できている」ように見えます。
見分け方は簡単です。
直近の20件で、人が修正した件数を数える。
修正0件なら、チェックは機能していません。AIが完璧だからではなく、見ていないから0件です。9割の精度なら、20件のうち2件前後は直っているはずです。
⚠️ ここで「じゃあチェックを厳しくします」と決めると、元の作業時間に戻ります。そうではなく、そもそも人が見なくていい用途に移すか、間違いが下流に流れない形に変えるのが先です。
責任の所在は、AIを入れる前と変わらない
「AIが間違えたときの責任は誰か」も、よく止まる論点です。
結論から言うと、変わりません。その業務の責任者が、これまでどおり負います。AIは、部下や外注先と同じ位置にあります。部下が作った資料が間違っていたとき、責任は部下ではなく、承認した人にあります。
新しいルールが要るのではなく、既にあるルールのどこに当てはまるかを確かめるだけです。
- その業務は、いま誰が最終確認していますか
- その人は、AIの出力を確認する立場のままですか
この2つに答えられれば、責任の話は終わります。答えられないなら、それはAIの問題ではなく、もともと責任者が決まっていなかったということです。
金曜に、1つだけ
いま「AIで自動化したい」と挙がっている業務を1つ選んで、2つだけ答えてください。
「間違ったまま進んだとき、誰かが気づきますか」
「気づかずに流れたら、戻せますか」
両方に「はい」と言えるなら、9割の精度で今日から始められます。どちらかが「いいえ」なら、精度を上げる話ではなく、気づける工程を挟むか、戻せる範囲に用途を狭める方が先です。
「AIが間違えたらどうするんですか」への答えは、「間違っても大丈夫なところから使います」です。
業務のAI化、どこから始めるか迷ったら
業務ドックが、御社の業務を1件ずつ診てAI化・標準化の優先順位を設計します。まずは無料相談、または業務AI化の無料診断からどうぞ。


コメント