ここまでの4本は、担当者が自分の努力で伸ばせる軸でした。
今日からの3本は違います。どれだけ頑張っても、一人では動かせない領域に入ります。

「うまくいっているのに、広がらない」
よく聞く言葉です。そして、たいてい次のように解釈されます。
「他の部署が、まだ乗り気じゃなくて」
やる気の問題として説明されます。ただ、実際に見に行くと、そうではないことがほとんどでした。
担当者の権限の外に、壁が3つあります
うまくいった取り組みを隣に広げるとき、必ず出てくるものがあります。
| 何をする必要があるか | 誰の権限か | |
|---|---|---|
| 様式を変える | 申請書やフォーマットを直す | 総務・所管部署 |
| 他部署に確認する | 前工程・後工程に影響が出る | 相手部署の責任者 |
| 「やめる」と決める | いまの手順を廃止する | 決裁権を持つ人 |
3つとも、担当者にはできません。能力の問題ではなく、権限の問題です。
そして、この3つが要るかどうかは、やってみるまで分かりません。自分の部署の中だけなら要らなかったものが、隣に広げた瞬間に全部出てきます。
だから「小さく始めよう」で止まります
「まずは小さく始めましょう」は、正しいアドバイスです。リスクが小さく、速い。
⚠️ ただし、小さく始めると、権限が要る場面に一度も当たりません。当たらないまま成功します。そして、広げようとした瞬間に、3つの壁に同時にぶつかります。
このとき現場から見ると、こう見えます。
「急に、話が進まなくなった」
急に進まなくなったのではありません。それまでは、権限が要る場所に触っていなかっただけです。
いま、どの段階にいるか
| 段階 | この軸では | |
|---|---|---|
| 0 | 無い | 誰が推進するか決まっていない |
| 1 | 知っている | 推進役が要ることは認識されている |
| 2 | できる(支援あり) | 上に相談すれば動く。自分からは動かせない |
| 3 | できる(自力) | 自部署の中なら、決裁を取って動かせる |
| 4 | 人に渡せる | 部署をまたいで、決める人を巻き込める |
3と4のあいだに、大きな崖があります。
段階3までは「自分の担当範囲」の話です。段階4は「自分の担当ではない範囲」を動かします。ここは、担当者の努力では届きません。役職か、正式な役割が要ります。
⚠️ だから、この軸だけは本人ではなく、会社が用意するものです。「推進担当を置く」という一言で段階が2つ上がることがあります。
最初の一歩
いまの取り組みで、決裁が要る変更を1つ書き出してください。
そして、それが誰の承認かを確認します。確認するだけです。まだ通しません。
⚠️ たいてい、その場で答えが出ません。「たぶん総務……いや、情シスかな」となります。その状態が答えです。誰の承認か分からないものは、永遠に承認されません。
分かったら、その人を次の打ち合わせに呼んでください。説得するためではなく、見てもらうためです。
推進体制とは、組織図の話ではありません。決める人が、その場にいるかどうかです。
次回は、軸⑥ガバナンス・ルール——「禁止より、曖昧の方が止まる」という話です。
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