うまくいっているのに、隣の部署に広がらない|企業のAI活用7軸⑤推進体制

企業でのAI活用

ここまでの4本は、担当者が自分の努力で伸ばせる軸でした。

今日からの3本は違います。どれだけ頑張っても、一人では動かせない領域に入ります。

企業のAI活用7つの軸 ⑤ 推進体制

「うまくいっているのに、広がらない」

よく聞く言葉です。そして、たいてい次のように解釈されます。

「他の部署が、まだ乗り気じゃなくて」

やる気の問題として説明されます。ただ、実際に見に行くと、そうではないことがほとんどでした。

担当者の権限の外に、壁が3つあります

うまくいった取り組みを隣に広げるとき、必ず出てくるものがあります。

何をする必要があるか 誰の権限か
様式を変える 申請書やフォーマットを直す 総務・所管部署
他部署に確認する 前工程・後工程に影響が出る 相手部署の責任者
「やめる」と決める いまの手順を廃止する 決裁権を持つ人

3つとも、担当者にはできません。能力の問題ではなく、権限の問題です。

そして、この3つが要るかどうかは、やってみるまで分かりません。自分の部署の中だけなら要らなかったものが、隣に広げた瞬間に全部出てきます。

だから「小さく始めよう」で止まります

「まずは小さく始めましょう」は、正しいアドバイスです。リスクが小さく、速い。

⚠️ ただし、小さく始めると、権限が要る場面に一度も当たりません。当たらないまま成功します。そして、広げようとした瞬間に、3つの壁に同時にぶつかります。

このとき現場から見ると、こう見えます。

「急に、話が進まなくなった」

急に進まなくなったのではありません。それまでは、権限が要る場所に触っていなかっただけです。

いま、どの段階にいるか

段階 この軸では
0 無い 誰が推進するか決まっていない
1 知っている 推進役が要ることは認識されている
2 できる(支援あり) 上に相談すれば動く。自分からは動かせない
3 できる(自力) 自部署の中なら、決裁を取って動かせる
4 人に渡せる 部署をまたいで、決める人を巻き込める

3と4のあいだに、大きな崖があります。

段階3までは「自分の担当範囲」の話です。段階4は「自分の担当ではない範囲」を動かします。ここは、担当者の努力では届きません。役職か、正式な役割が要ります。

⚠️ だから、この軸だけは本人ではなく、会社が用意するものです。「推進担当を置く」という一言で段階が2つ上がることがあります。

最初の一歩

いまの取り組みで、決裁が要る変更を1つ書き出してください。

そして、それが誰の承認かを確認します。確認するだけです。まだ通しません。

⚠️ たいてい、その場で答えが出ません。「たぶん総務……いや、情シスかな」となります。その状態が答えです。誰の承認か分からないものは、永遠に承認されません。

分かったら、その人を次の打ち合わせに呼んでください。説得するためではなく、見てもらうためです。

推進体制とは、組織図の話ではありません。決める人が、その場にいるかどうかです。


次回は、軸⑥ガバナンス・ルール——「禁止より、曖昧の方が止まる」という話です。


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