部下の資料が、AIで作ったものか分かりません|聞くのは「使ったか」ではなく「どこを自分で確かめたか」

企業でのAI活用

部下から報告資料が届きました。

見出しが揃っていて、文章も読みやすい。前に比べて、ずいぶん整っています。

ふと、「これはAIで作ったのだろうか」と気になります。聞いてみたいけれど、疑っているように聞こえそうで、言い出しにくい。

「使った?」と聞いても、分かることは少ない

思い切って聞いたとします。

「この資料、AIで作った?」

返ってくるのは、たいてい「使いました」か「使っていません」の一言です。

どちらの答えでも、資料の中身が確かかどうかは、まだ分かりません。AIを使っていなくても、古い数字を写していることはあります。AIを使っていても、本人が一つずつ確かめていれば、中身は確かになっていきます。

しかも、聞き方によっては、相手は「使ってはいけなかったのか」と受け取ります。次から使っても言わなくなると、受け取る側に見える情報はかえって減ります。

確かさは、確かめた箇所で変わる

確かさは、確かめた箇所で変わる

資料の中で、間違えると困る箇所は、次の3つに分けて考えられます。

箇所 間違えたときに起きること
数字(件数・金額・割合) 判断の前提がずれる
固有名詞と日付(社名・人名・期日) 相手に失礼になる。予定が狂う
結論(だから何をするか) 誰が決めたのかが分からなくなる

この3つについて、本人がどこまで確かめたかが分かれば、受け取る側は見るべき場所を絞れます。AIを使ったかどうかは、その後で聞けば足ります。

聞き方を変える

「使った?」の代わりに、箇所を指して聞きます。

✕ この資料、AIで作った?
◯ この数字は、どこから持ってきた?
◯ この結論は、あなたの判断? それとも案として書いた?

下の聞き方なら、AIを使ったかどうかに関係なく、答えられます。答えにつまった箇所は、確かめきれていないかもしれません。そこから見ていくと早く済みます。

責める必要はありません。「そこだけ確かめてから、もう一度見せて」で済みます。

「AIに出してもらいました」と返ってきたら

数字や事例の出どころを聞いて、「AIに出してもらいました」と返ってくることがあります。

これは、出どころの答えにはなっていません。AIが挙げた数字や事例は、元になった資料を本人が開いて初めて、出どころが分かったことになります。AIの回答には、もっともらしいのに元の資料が見つからないものが混ざることがあるからです。

「AIが出した事例の、元の記事や資料はどれ?
 開いて、同じことが書いてあるか見てから載せよう」

元が見つからなければ、その数字や事例は資料から外すか、「出典未確認」と書いて残します。外すか残すかは、その資料を何に使うかで決めます。社外に出す資料や、判断の根拠にする数字なら外します。検討の材料として並べるだけなら、印を付けて残す、という分け方もあります。

提出のときに、3行を添えてもらう

提出のときに、3行を添えてもらう

毎回聞き直すのは手間です。そこで、資料を出すときに、次の3行を添えてもらいます。

確かめた箇所      2ページの件数(元の台帳と照合した)
確かめていない箇所  3ページの他社の事例(出典を見ていない)
自分で決めたこと    結論の「来月から試す」

例は説明のためのものです。項目は、自分の職場の資料に合わせて入れ替えてください。

ポイントは、「確かめていない箇所」を書いてよい欄にしておくことです。空欄が許されない形にすると、確かめていなくても「確かめた」と書きたくなります。確かめていないと書いてあれば、受け取る側はまずそこから見られます。「確かめた」とある箇所も、数字を1つだけ抜き出して元と照らすと安心です。

AIを使ったかどうかを書く欄は、ここには入れていません。社内のルールで使用の申告が決まっている場合は、そちらに従ってください。

受け取る側が先にやる

この3行は、上司が自分の資料にも付けると定着しやすくなります。

自分が会議に出す資料の末尾に、同じ3行を書いてみます。「確かめていない箇所」が1つも書けないなら、全部を確かめ終えているか、確かめていないことにまだ気づいていないのかもしれません。書こうとすると、自分でも見えてきます。

部下に頼むのは、その後です。

今日、1つだけやる

次に受け取る資料で、数字を1つだけ選びます。

そして、こう聞いてください。

この数字は、どこから持ってきた?

すぐに出どころが返ってくれば、確かめている見込みは高いと言えます。気になるときは、元の資料を一緒に開きます。返事につまったら、「そこだけ確かめてから、もう一度見せて」と返します。

資料の確かさを見るだけなら、AIを使ったかどうかは聞かなくても進められます。社内の情報をどのサービスに入れてよいかは、別に社内のルールで確かめておきます。


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