「AIで楽になりそうな業務を、各部署から出してください」
たとえば、こう呼びかけたとします。思ったより多くの案が集まりました。議事録の要約、問い合わせへの回答、報告書の下書き、データの集計、翻訳。
一覧にしたところで、手が止まります。どれから始めればよいのか、決め手が見つからないのです。
数か月後、その一覧は共有フォルダの中で開かれないまま、ということがあります。案が足りなかったのではなく、選び方が決まっていなかったのかもしれません。
良し悪しで選ぶと、決まりにくい
集まった案を前にすると、まず「効果が大きいのはどれか」で比べたくなります。
ところが、案の多くは1行で書かれています。「議事録をAIで要約したい」。この1行からは、月に何回あるのか、誰がやっているのか、要約したものを誰が読むのかが分かりません。
分からないものどうしを比べると、声の大きい部署や、話題になっている使い方に引っ張られることがあります。選ばれた案が、いざ始めると担当者がいなかった、ということも起きます。
比べる前に、比べられる形になっているかを見ます。
残すのは、3つの欄が埋まる案

一覧に3つの列を足します。
| 列 | 書くこと |
|---|---|
| 誰が | いま、その業務を実際にやっている人の名前(部署名ではなく) |
| 入れて出す | 何を入れて、何が出てくれば終わりか |
| 間違えたら | AIが間違えたとき、誰がどの時点で気づけるか |
案を出した人に、この3列を埋めてもらいます。推進する側が代わりに埋めるのではなく、出した本人に聞きます。本人が実際の担当を知らないときは、担当している人に一緒に聞きます。
埋まらない欄があれば、その案はいったん保留にします。捨てるのではなく、「まだ選べる形になっていない」という扱いです。
欄が埋まらない案の、3つのパターン
「誰が」が書けない案は、業務の持ち主がいない案です。名前が出てこないのは、決まった人がやっていないか、提案した人が実際の担当を知らないことが考えられます。始めても、試してくれる人がいません。
「入れて出す」が書けない案は、業務の範囲がまだ決まっていない案です。「報告書をAIで」だけでは、どの報告書の、どの部分かが分かりません。入れるものと出てくるものが書けて、初めて試すことができます。
「間違えたら」が書けない案は、確かめる仕組みが無い案です。AIの出力は、ときどき間違えます。間違いに気づく人と時点が決まっていない業務は、最初の1つには向きにくいです。
3つとも埋まった案だけを並べると、数が減ることもあります。そこで初めて、効果の大きさで比べます。比べるものが同じ形をしているので、話が早くなります。
埋めてもらうと、案が書き直されてくる

3列を埋めてもらうと、案そのものが変わることがあります。
最初の案 議事録をAIで要約したい
埋めた後 誰が 課の定例の議事録は、毎週、担当のAさんが書いている
入れて出す 会議の録音を入れて、決まったことと宿題の一覧が出れば終わり
間違えたら Aさんが翌朝、参加者に送る前に読む
最初の1行より、ずっと具体的になります。「議事録の要約」が、「定例の決定事項と宿題の一覧」に変わりました。こうなると、試すかどうかを決められます。
逆に、埋めようとして「そもそもこの会議の議事録は、ほとんど読まれていない」と気づくこともあります。その案は、いったん保留のままにしておく理由になります。
選ばなかった案に、返事をする
案を出した人は、自分の案がどうなったかを気にしています。何も返さないと、次に募集したときに出てこなくなるかもしれません。
保留にした案には、どの欄が埋まらなかったかを添えて返します。
ご提案ありがとうございます。
「間違えたら」の欄が埋まると、次の候補に入れられます。
AIの出力を、どなたがどの時点で確かめられそうか、教えてください。
「採用しませんでした」ではなく、「この欄が埋まれば候補に入る」と返します。出した人が、次に何をすればよいか分かる返し方です。
今日、1つだけやる
集まった一覧から案を1つだけ選び、出した人に「誰が」「入れて出す」「間違えたら」の3つを聞いてください。
全部の案に一度に聞かなくてかまいません。1つ聞いてみると、ほかの案で埋まりにくい欄の見当もつきます。
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