禁止されるより、曖昧な方が止まります|企業のAI活用7軸⑥ガバナンス・ルール

企業でのAI活用

社内でAIが使われない理由を聞くと、2つに分かれます。

「禁止されているので」
禁止はされていないんですけど……

後者の方が、進みません。

今日は7つの軸の6本目、ガバナンス・ルールの話です。

企業のAI活用7つの軸 ⑥ ガバナンス・ルール

禁止は、実は扱いやすい

禁止されている場合、話は単純です。何が禁止か分かっているので、その外側で考えられます。

  • 顧客情報は入れない → 入れない前提で設計する
  • 社外サービスは不可 → 社内環境で何ができるか探す

制約は窮屈ですが、判断はできます。そして、必要になれば「この条件なら許可されるか」と交渉できます。交渉する相手も、はっきりしています。

曖昧だと、全員が安全側に倒れます

「決まっていない」場合、こうなります。

現場の一人ひとりが、自分で判断することになります。そして、判断を間違えたときの責任は自分に来ます。上司も判断できません。基準が無いからです。

こうなると、全員が同じ選択をします。

使わない

⚠️ これは臆病だからではなく、合理的です。使わなければ、少なくとも自分が責められることはありません。曖昧さは、組織全体を一斉に止める方向に働きます。

さらに厄介なのは、止まっていることが記録に残らないことです。禁止なら「禁止されている」と報告されます。曖昧な場合は、誰も何も言わないまま、何も起きません。

規程を作ることではありません

ここで「じゃあ規程を整備しよう」となります。そして、たいてい半年かかります。

⚠️ 規程の分厚さと、現場が動けるかは、あまり関係がありませんでした。

見るべきは、こちらです。

現場が、その場で判断できる粒度になっているか

たとえば、こう書いてあっても現場は動けません。

✕ 機密情報の取り扱いには十分留意すること

「十分」が判断できないからです。動けるのは、こちらです。

◯ 顧客名・個人名・金額が入っているものは入力しない
◯ それ以外の社内文書は入力してよい
◯ 迷ったら、情シスの◯◯に聞く(回答は当日中)

3行で足ります。大事なのは網羅性ではなく、現場が今日から判断できることです。

いま、どの段階にいるか

段階 この軸では
0 無い 何も決まっていない。話題にも上がらない
1 知っている ルールが要ることは認識されている
2 できる(支援あり) 聞けば答えが出る。誰に聞くかは分かっている
3 できる(自力) 自分では判断できる。他の人は分からない
4 人に渡せる 現場の誰もが、その場で判断できる

3と4のあいだに、大きな崖があります。

段階3は「詳しい人が判断できる」状態です。⚠️ その人がボトルネックになります。質問が全部そこに集まり、答えが返るまで全員が止まります。

段階4は、書いてあるものを見れば判断できる状態です。詳しい人は、例外だけ見ればよくなります。

最初の一歩

いま許されている範囲を、1枚に書いてください。

正式な規程である必要はありません。あなたの理解でよいので、「これは入れていい/これは駄目」を書きます。10分で書けます。

そして、それを情シスか法務に見せてください。

「私はこう理解しているんですが、合っていますか」

⚠️ ゼロから規程を作ってもらうより、はるかに速く進みます。相手は「作る」のではなく「直す」だけでよいからです。白紙を渡されると人は止まりますが、間違った案を渡されると直したくなります。

そして、直されたその紙が、そのまま最初のルールになります。


次回は最終回、軸⑦横展開・自走——7軸でいちばん大きな崖の話です。


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