転記作業を自動化する前に|その転記、なぜ10回あるんですか

企業でのAI活用

こういう報告を受けることがあります。

「同じ内容を10回転記していたんですが、AIで全部自動化しました」

立派な成果です。工数も実際に減っています。それでも、順番が逆です。

聞くべきことが1つ飛ばされています

その転記は、なぜ10回あるのですか。

聞くと、だいたい同じ答えが返ってきます。「部署ごとに様式が違うので」。

では、様式を1つにそろえたら、転記は何回になりますか。

ゼロ回です。

AIで自動化すると、10回の転記は「速い10回」になります。様式をそろえると、10回が無くなります。どちらが強いかは、比べるまでもありません。

AIは手段で、目的は業務改善です

AIは手段で、目的は業務改善です

順番があります。

やること 効き方
やめる その作業自体が消える
減らす 回数・項目・関係者が減る
自動化する 残ったものを速くする

①と②を飛ばして③から入るのが、いちばん多い失敗です。

理由は分かります。③は目に見える成果になるからです。「AIで自動化しました」は報告できますが、「様式をそろえました」は地味です。しかも様式をそろえるには、他部署と話す必要があります。

面倒な方が、効きます。

承認も同じ構造です

「10人の承認を順番に回していて、いつも1週間かかります」

ここでも、聞くことは1つです。順番である必要はありますか。

同時に出せば、10人が並行して見るので1日で終わります。順次にしている理由が「前の人が見てからでないと判断できないから」なら、それは正しい順次です。そうでないなら、ただの慣習です。

そして、もう一段あります。

そもそも、10人とも要りますか。

金額や影響範囲で分ければ、大半は2〜3人で足ります。ここまで来ると、AIはもう要りません。

AIを使わない、という結論でいい

AIを使わない、という結論でいい

業務改善の相談で、AIを使わない結論になることがあります。それでいいのです。

⚠️ 危ないのは、AIを入れること自体が目的になっているときです。そうなると、「無くす」という最も強い手が選択肢から消えます。無くしてしまうと、AIの導入実績が残らないからです。

月曜に、1つだけ

自動化を検討している作業を1つ選んで、「これは、なぜ必要なのか」を3回聞いてください。

なぜ転記が要るのか       → 様式が違うから
なぜ様式が違うのか       → 部署ごとに作ったから
なぜ部署ごとに作ったのか → …(ここで、たいてい誰も答えられません)

誰も答えられないところまで来たら、そこは変えられます。

次回

次は、誰も読んでいない定例レポートの話です。「読んでいますか」と聞くと全員が「見ています」と答えるのに、実際に数えると0人だった、という例を扱います。


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