「何にいちばん時間がかかっていますか」に、即答できますか|企業のAI活用7軸②業務の言語化

企業でのAI活用

AI導入の相談で、いちばん最初に聞く質問があります。

「いまの業務で、何にいちばん時間がかかっていますか」

この質問に、その場で答えられる人はあまりいません。忙しくないからではありません。毎日やっているのに、工程に分けて見たことがないからです。

今日は7つの軸の2本目、業務の言語化の話です。

企業のAI活用7つの軸 ② 業務の言語化

AIは、工程にしか入りません

ここが、これまでの道具といちばん違うところかもしれません。

「請求書の処理」という言い方では、AIをどこに入れるか決められません。塊のままだからです。分けると、こうなります。

工程 受け取る 渡す
1 メールから請求書PDFを取り出す 取引先 自分
2 金額と取引先名を台帳に転記する 自分 自分
3 発注データと突き合わせる 購買 自分
4 差異があれば担当者に確認する 自分 各部署
5 承認に回す 自分 課長

分けた瞬間に、入る場所が見えます。2は入ります。3も入ります。4と5はAIの話ではありません——人が決めることだからです。

塊のままだと、この判断ができません。「請求書処理をAI化しよう」で始まった話が、半年後に「思ったほど変わらなかった」になるのは、たいていここです。

マニュアルを書くことではありません

ここでよく出るのが「じゃあマニュアルを整備しよう」です。

⚠️ これは、目的がずれます。マニュアルは手順を再現するためのもので、量が要ります。いま必要なのは分解で、量は要りません。

見るべきは3つだけです。

  • どこから始まるか(何が来たら動き出すか)
  • どこで終わるか(何を出したら終わりか)
  • 誰に渡すか(次に持つのは誰か)

この3つが言えれば、その工程は言語化できています。A4半分で足ります。

なぜ、これが難しいのか

うまい人ほど、答えられません。

慣れた仕事は、頭の中で工程が溶けています。「メールを見て、だいたい分かるので、そのまま処理して、気になったら聞く」——本人の中では1つの動作です。

ところが、この状態のままだと渡せません。新しい人が来ても、AIを入れようとしても、どこから手を付けるかが誰にも分からない。

「属人化」と呼ばれているものの正体は、能力の差ではなく、工程が言葉になっていないことだと感じています。

いま、どの段階にいるか

7つの軸は、それぞれ5つの段階で見ます。

段階 この軸では
0 無い 業務を分けて考えたことがない
1 知っている 工程に分けるという発想は知っている
2 できる(支援あり) 一緒にやれば分けられる。一人だと止まる
3 できる(自力) 自分の業務なら、一人で分けられる
4 人に渡せる 他人の業務を、聞き取って分けられる

3と4のあいだに、大きな崖があります。

自分の仕事を分解できる人はいます。問題は、その人が隣の部署に行ったときです。知らない業務を、担当者に聞きながら工程に落とせるか。ここができると、その人1人で会社中の業務が言語化できるようになります。

段階3が10人いるより、段階4が1人いる方が、会社としては進みます。

最初の一歩

業務を1つ選んで、5工程に割ってみてください。

各工程に、始まり・終わり・渡す相手を書きます。それだけです。1つの業務なら15分で終わります。

⚠️ きれいに割れなくて構いません。割れなかった場所こそが、いちばん属人化している工程です。そこが分かることに価値があります。

そして、割った表を担当者に見せてください。

「これで合っていますか」

たいてい、直されます。その直しが、言語化そのものです。


次回は、軸③改善の型——「直しどころを、勘ではなく手順で見つけられるか」の話です。


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