できる人に仕事が集まるのは、評価ではなく設計の結果です

企業でのAI活用

どの職場にも、仕事が集まる人がいます。

その人に頼めば早い。説明が少なくて済む。品質も安定している。だから、また頼む。

これは、悪意でも怠慢でもありません。その場その場では、全員が正しい判断をしています。頼む側は速い方を選び、頼まれる側は断る理由がない。

問題は、その正しい判断を200回繰り返した後の状態です。

集まる理由は「能力」ではありません

「あの人は優秀だから」と説明されがちですが、少しずれていると感じています。

集まる人には、共通する条件があります。

条件
1 依頼の受け取り口が広い(何を頼んでいいか、相手が迷わない)
2 確認の往復が少ない(前提を自分で補完してしまう)
3 断らない(断る手間より、やる手間の方が小さい)

⚠️ 3つとも、能力ではなく振る舞いです。そして、3つとも本人にとっては合理的です。

依頼者から見ると、この人に頼むのはいちばんコストが低い選択になります。だから集まります。能力が高いから集まるのではなく、頼むのが楽だから集まります。

集まった状態は、外から見えません

集まった状態は、外から見えません

ここが厄介なところです。

その人が処理し切っている間、何も問題は起きません。納期は守られ、品質も落ちない。上司から見れば、その業務は健全です。

見え始めるのは、次のどれかが起きたときです。

  • 異動する
  • 休む
  • 量が1.5倍になる

そして、そのときには手遅れです。引き継ぐ相手には、何が集まっていたのかが分かりません。集まった経緯が、どこにも書かれていないからです。

「平準化しよう」で解けない理由

対策として出るのは、たいてい「仕事を分散させよう」です。

これは、うまくいきません。分散するには、渡せる形になっている必要があるからです。集まっているのは、まさに渡せる形になっていない仕事です。

順番が逆になっています。

✕  分散させる → 渡せる形になる
◯  渡せる形にする → 分散できる

そして「渡せる形にする」のは、集まっている本人にしかできません。中身を知っているのがその人だけだからです。⚠️ いちばん忙しい人に、追加の仕事を頼むことになります。

だから進みません。悪意も怠慢も無いのに、進みません。

現実的に効く、1つのこと

現実的に効く、1つのこと

全部を渡せる形にするのは無理です。1つだけ選びます。

選ぶ基準は「大変なもの」ではありません。頻度が高くて、判断が少ないものです。

  • 大変なもの → 判断が多い → そもそも渡せない
  • 頻度が高くて判断が少ない → 渡せるし、渡すと量が減る

たとえば「毎週の数字の取りまとめ」は渡せます。「クレームの一次対応」は渡せません。同じ「その人しかできない」でも、中身が違います。

AIは、この構造のどこに効くのか

いま、AI導入の相談を多く受けます。この文脈で言えば、AIが効くのは「頻度が高くて判断が少ない」側です。

⚠️ 判断が多い側には、そのままでは効きません。AIが出した答えを、結局その人が全部確認することになるからです。確認できるのがその人だけという構造は、何も変わっていません。

AIを入れて楽になった人と、変わらなかった人の差は、そこにありました。楽になったのは、渡せる仕事を先に切り出していた人です。

月曜に、1つだけ

自分に集まっている仕事を、頻度の高い順に3つ書き出してみてください。

そのうち、判断がほとんど入っていないものに印を付けます。1つあれば十分です。

その1つについて、始まり・終わり・渡す相手を3行で書く。それが、渡せる形の最小単位です。

⚠️ すぐに渡さなくて構いません。書いてあるだけで、あなたが休んだ日に、誰かが引き取れるようになります。

集まっているのは、あなたの評価が高いからではありません。渡せる形が、まだ無いからです。


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