AIツールの選定を任された担当者の机には、たいていこの表があります。
| 項目 | ツールA | ツールB | ツールC | ツールD | ツールE |
|---|---|---|---|---|---|
| 文章生成 | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | △ |
| 社内データ連携 | ◯ | △ | ◯ | × | ◯ |
| セキュリティ | ◯ | ◯ | △ | ◯ | ◯ |
| 料金 | △ | ◯ | ◯ | ◯ | △ |
| …(あと36行) |
丁寧に作られています。そして、3か月たっても決まっていません。
行を増やすほど、決まらなくなる
比較表は、行を足すたびに「どれも一長一短」に近づきます。
40の項目で5つのツールを比べれば、どのツールにも×や△が必ずいくつか付きます。すると会議では、こうなります。
「Aは連携が強いけど、料金がね」
「Bは安いけど、連携が弱い」
「もう少し情報を集めてから決めましょう」
そして行が1つ増えます。
⚠️ これは担当者の力不足ではありません。比べる軸が40あるのは、何に使うかが40通り想定されているからです。使い道が決まっていない状態では、どれを選んでも「足りない所」が残るので、決める理由が作れません。
選定の順番が、逆になっている

決まらない選定は、たいていこの順番で進んでいます。
✕ ツールを比べる → 良さそうなものを選ぶ → 何に使うか考える
◯ 何に使うか1つ決める → その1つで試す → 足りなければ次を試す
使い道が1つなら、比較項目は3〜4行で済みます。
たとえば「毎週の会議の議事録を、翌朝までに参加者へ送る」が使い道なら、見るのはこれだけです。
- 会議の録音(または文字起こし)を読ませられるか
- 社外に出してよいデータの扱いか
- 担当者が、明日から追加の申請なしで使えるか
40行のうち、残りの36行は、この使い道では関係ありません。
「全社で使うから、広く比べないと」への答え

こう返されることがあります。
「全社導入なので、1つの業務だけで決めるわけにはいかない」
もっともに聞こえます。ただ、全社で何に使われるかは、導入してみるまで誰にも分かりません。分からないものを想定して比べると、想定の数だけ行が増えます。
現実的なのは、次の形です。
- 最初の1つの業務で選ぶ
- 3か月使って、実際に出てきた2つ目・3つ目の使い道を記録する
- そこで足りない所が出たら、そのときに追加や乗り換えを考える
⚠️ 乗り換えのコストが心配なら、最初は契約期間の短いプランを選ぶこと。選定を慎重にするより、戻れる形で始める方が安くつきます。
決めるための、1週間の段取り
| 日 | やること |
|---|---|
| 1日目 | 使い道を1つ決める(いま時間がかかっていて、誰がやっているか分かる業務) |
| 2日目 | その使い道で、外せない条件を3つ書く |
| 3〜4日目 | 条件を満たす候補を2つに絞り、実際の業務データ(出してよい範囲)で試す |
| 5日目 | その業務の担当者に、どちらなら明日から使うかを聞く |
最後の質問の答えで決めます。比較表の◯の数では決めません。
月曜に、1つだけ
いま手元にある比較表を開いて、一番上の行の上に1行足してください。
「このツールで、最初に誰の、何の作業を楽にするか」
そこが空欄なら、比較を続けても決まりません。先にその1行を埋めれば、40行のうち見なくていい行が、ほとんどだと分かります。
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