AIの下書きを直す時間のほうが長い、と言われました|直しているのは文章ではなく、骨組み

企業でのAI活用

「AIに下書きを作らせてみたんですが、直すのに時間がかかって、結局自分で書いたほうが早かったです」

AIを試した人から、こういう声が出ることがあります。報告書、社内向けの案内文、提案の要約。出てきた文章はそれらしく見えるのに、手を入れ始めると止まらない。これでは使う意味がない、と感じるのは自然です。

ただ、どこを直したのかを分けてみると、直しているのは文章ではないことが多いです。

直した箇所は3種類に分かれる

AIの下書きと、自分が直したあとのものを並べます。直した箇所に印を付けると、だいたい次の3つに分かれます。

・言葉の直し   … 言い回し、敬語、社内の呼び方への置き換え
・事実の直し   … 数字、日付、固有名詞、経緯の誤り
・骨組みの直し … 結論が違う、順番を入れ替えた、段落ごと消した・足した

言葉の直しは、数が多くても1か所あたりは短く済みます。事実の直しは、確かめる手間はかかりますが、直すこと自体は速いです。

時間を食っているのは、骨組みの直しであることが多いです。結論を書き換えると、それを支えていた段落も全部書き直しになります。順番を入れ替えると、つなぎの文がすべて合わなくなります。1か所の直しが、下書き全体に広がります。

骨組みが外れるのは、決めていないから

骨組みが外れるのは、決めていないから

骨組みの直しが多いときは、AIに何を渡したかを見ます。たとえば次のような頼み方です。

渡したもの 起きること
「先月の活動報告を書いて」とテーマだけ 何を結論にするかをAIが決める。多くは無難な総括になる
材料を全部貼り付けて「まとめて」 材料の順に並べる。読み手が知りたい順にはならない
「部長向けに」と読み手だけ 部長が何を判断するための文書かが分からず、要点がずれる

どれも、結論と順番を決めないまま渡しているという点で同じです。決めていないところは、AIがもっともらしく埋めます。埋めた結論が自分の言いたいことと違えば、全体を組み直すことになります。

これは人に頼むときも同じです。後輩に「先月の報告、まとめておいて」とだけ頼めば、戻ってきたものを大きく直すことになります。頼み方がうまい人は、頼む前に「結論はこれ、順番はこう」と一言添えていることが多いです。

先に書くのは、3行の骨組み

骨組みは、長く書く必要はありません。次の3行が書ければ足ります。

誰が読んで何を決めるか   部長が、来月も同じ体制で続けるかを決める
結論                     続ける。ただし問い合わせ対応を1人増やす
順番                     ①結論 ②先月の件数 ③増やす理由 ④費用

この例の中身は説明のためのものです。自分の文書に合わせて入れ替えてください。

この3行と材料をAIに渡して、下書きを作らせます。結論と順番が決まっているので、AIが埋めるのは各段落の中身だけになります。外れても段落1つ分で済みます。

3行が書けないときは、AIに渡す前の段階で止まっています。何を結論にするか自分でも決まっていないなら、下書きを誰が書いても、骨組みの直しは起きます。

直した量を、前後で比べる

直した量を、前後で比べる

骨組みを渡す前と後で、直した箇所の数を比べます。

同じ種類の報告書で比べる

骨組みなし  言葉 12 / 事実 3 / 骨組み 5(うち段落ごと書き直し 3)
骨組みあり  言葉 10 / 事実 3 / 骨組み 1

この数字は説明のための例です。実際の件数は文書ごとに変わります。

言葉と事実の直しは、あまり変わりません。変わるのは骨組みの直しです。ここが減ると、段落ごとの書き直しが減ります。

減らすのはAIへの言い方の工夫ではなく、渡す前に決めることです。言い方を工夫して1回うまくいっても、結論を決めずに渡せば、次の文書でまた骨組みが外れます。

骨組みを書くと、文書の要不要も見える

3行を書き始めると、別のことが分かります。「誰が読んで何を決めるか」が書けない文書がある、ということです。

毎月出しているけれど、読んだ人が何を決めているのか分からない報告。前任者から引き継いだので続けている案内文。そういう文書は、AIで速く作れるようになっても、作る意味は変わりません。

AIの下書きが合わなかったことがきっかけで、文書の目的があいまいだったことが見つかる。下書きが外れたこと自体が、文書を見直す入口になります。

今日、1つだけやる

AIに作らせて、直すのに時間がかかった下書きを1つ手元に用意してください。

直した箇所に、言葉・事実・骨組みのどれかを書き込みます。

骨組みの直しが少なければ、時間がかかった理由は別のところにあることが多いです。言葉の直しが多ければ、社内の呼び方や言い回しの一覧を先に渡す手があります。事実の直しが多ければ、確かめ方を見直します。

骨組みの直しが多ければ、次に同じ文書を作るとき、先に3行を書いてから渡します。

誰が読んで何を決めるか
結論
順番

1回目は、3行を書くのに時間がかかるかもしれません。それでも、書き直す段落の数で比べてみてください。


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