「AIのライセンス、全員分を契約しますか。それとも一部から始めますか」
稟議を書く前に、この問いで止まっていることがあります。
全員分なら、年間の金額がそのまま稟議の壁になります。一部から始めるなら、誰に配るかで揉めます。配った人と配らなかった人の差も気になります。
どちらも決め手がありません。人数で決めようとしているあいだは、決まりません。
人数で決めると、使われ方が決まらない
全員分を配った会社では、最初の月は開かれます。翌月、ログインする人が減ります。配られた側に「これで何をするか」が渡っていないからです。
一部に配った会社では、別のことが起きます。配る先を部署や役職で決めると、その部署の中で「使う仕事がある人」と「無い人」が混ざります。使わない人の分が余り、使いたい人の分が足りません。
全員に配る → 使い道が渡っていない人の分が、そのまま余る
部署で配る → 部署の中で、使う人と使わない人が混ざる
役職で配る → 役職と「繰り返している業務」は、一致しない
3つに共通するのは、人を先に決めて、業務を後から探していることです。順番を逆にします。
先に数えるのは、毎週同じ形で繰り返す業務

ライセンスが要るのは、人ではなく業務です。業務が決まれば、その業務の担当者が決まり、担当者の数が最初に要る数になります。
数えるのは、毎週同じ形で繰り返している業務です。たとえば次のようなものです。
| 業務 | 担当 | 週あたりの回数 |
|---|---|---|
| 問い合わせへの一次返信 | 3人 | 40件 |
| 週報のとりまとめ | 5人 | 5回 |
| 見積書の下書き | 2人 | 10件 |
この表なら、最初に要る数は10です。部署の人数でも、会社の人数でもありません。
月に1回しかない業務は、最初の表に入れません。回数が少ないと、使い方が身につく前に次の回が来てしまい、効いたかどうかも分かりません。まず毎週回る業務で通して、月次の業務はそのあとに足します。
繰り返す業務が思い浮かばないときは、担当者に「先週、同じ形で2回以上やった作業」を聞いてください。本人は作業だと思っていないことが多く、聞かれてはじめて出てきます。
配る相手は、部署ではなく担当者の名前
業務が決まったら、配る先を名前で書きます。
✕ 営業部に10ライセンス
◯ 問い合わせの一次返信を担当している、Aさん・Bさん・Cさんに3ライセンス
名前で書くと、稟議に書く内容が変わります。「営業部でAIを活用する」ではなく、「問い合わせの一次返信を、週40件、3人で回している。この業務にAIを使う」になります。金額の横に、何に使うかが書かれた稟議になります。
「配られなかった人が不満に思わないか」という心配も、ここで小さくなります。配る基準が「部署」や「役職」だと、配られなかった理由を説明できません。「この業務の担当者から始める」なら、理由がそのまま説明になります。次に足す業務が決まっていれば、順番も伝えられます。
増やす条件を、契約の前に決めておく

ライセンスは、増やすのは簡単で、減らすのは難しいことがあります。契約の形は製品ごとに違うので、月単位で増減できるのか、年単位で固定なのかを、契約の前に確かめてください。
その上で、増やす条件を先に書いておきます。
| 1か月後に見るもの | 見ない |
|---|---|
| 決めた業務が、AIを使う形で回っているか | ログインの回数 |
| 担当者が、前のやり方に戻っていないか | 利用率の全社平均 |
| 次に足したい業務が、名前つきで出てきているか | 配っていない部署からの要望の数 |
ログインの回数は、業務が回っているかを教えてくれません。開いただけでも数字は上がります。見るのは、最初に決めた業務の側です。
回っていなければ、ライセンスの数を増やしても変わりません。回っていない理由は、業務の側にあります。前のやり方が残っているのか、入れる材料が揃っていないのか、確認の担当が決まっていないのか。ライセンスを足す前に、そこを見ます。
無料版で先に試すときの注意
契約の前に、無料版で試したいという話も出ます。試すこと自体はよいのですが、一つだけ先に確かめることがあります。
無料版と有料版では、入力した情報の扱いが違うことがあります。社内の情報をそのまま入れてよいかは、製品の利用条件と、社内のルールで決まります。試す前に、渡してよい情報の範囲を確かめてください。
範囲が決まったら、その範囲の中で、最初に決めた業務を10件ほど通してみます。結果を担当者が読んで、「このまま使える」「直せば使える」「使えない」に分けます。この分け方が、契約後に見るものと同じになります。
今日、1つだけやる
稟議書の「人数」の欄を書く前に、毎週同じ形で繰り返している業務を3つ書き出してください。
それぞれに、担当者の名前と、週あたりの回数を添えます。
名前の数が、最初に要るライセンスの数です。部署の人数とも、会社の人数とも違う数が出てきたら、それが契約の最初の単位です。
3つ書けないときは、業務がまだ見つかっていません。担当者に「先週、同じ形で2回以上やった作業」を聞くところから始めてください。
業務のAI化、どこから始めるか迷ったら
業務ドックが、御社の業務を1件ずつ診てAI化・標準化の優先順位を設計します。まずは無料相談、または業務AI化の無料診断からどうぞ。



コメント