「直しました」を、どこまで信じますか

業務改善の現場から

レビューで3点指摘して、翌日に直った版が戻ってきます。

指摘した箇所を開くと、たしかに直っています。では、これで通してよいでしょうか。

私は、直したつもりで客先に個人名を出しかけました

先月のことです。部長宛の報告書から、社外に出せない個人名を消す作業をしました。

表を2つ直して、確認して、終わったつもりでいました。

数日後、別の作業をしている途中で偶然気づきました。本文に5か所、同じ名前が残っていました。そのまま出していれば、客先の資料に個人名が載っていました。

指摘は受けていました。反映したつもりでもいました。足りなかったのは、直した後の確かめ方です。

表と見出しだけ直って、本文が残る

表と見出しだけ直って、本文が残る

これは私の不注意というより、形のある失敗です。

人は、目立つ場所から直します。表・見出し・箇条書きは、形が目立つので目に入ります。直すと、直した実感も強く残ります。

本文の中に埋まった1語は、目に入りません。しかも、表を直した達成感が「もう全部見た」という感覚を作ります。

だから、こうなります。

直した実感 = 目立つ場所を直した量
実際の残存 = 目立たない場所の量

この2つは、まったく連動しません。

目で追った「もう無いはず」は、根拠にならない

対策は、気をつけることではありません。気をつけて見落としたのが、この失敗です。

やることは1つです。

消したはずの語を、検索して0件を見る。

Wordなら Ctrl+F、Excelなら Ctrl+F、共有フォルダ全体なら検索ボックス。「0件」という表示を、目で見る。

30秒です。そして、この30秒だけが証拠になります。「全部見ました」は証拠ではありません。

管理職が言うのは、この1言

部下が「直しました」と持ってきたときに、詰めなくて構いません。こう聞くだけです。

「検索して0件でしたか」

この1言には、3つの効き目があります。

1つ目。その場で確かめられます。目の前で検索すれば10秒で終わります。

2つ目。繰り返すうちに、聞かれる前に検索してから持ってくるようになります。「気をつけて」と言い続けるより速く定着します。

3つ目。これは部下を疑う質問ではありません。「直した本人には見えない場所がある」という前提を、2人で共有する質問です。責める向きになりません。

検索できる指摘と、できない指摘を分ける

検索できる指摘と、できない指摘を分ける

ただし、この方法が効くのは検索できる指摘だけです。指摘を受けたとき、まず2つに分けてください。

種類 例 確かめ方
検索できる 個人名・社名・旧称・禁止表現・古い数字・旧URL 検索して0件を見る
検索できない 話の順番・主張の強さ・トーン もう一度、頭から通して読む

検索できる指摘を、目視で処理しないこと。逆に、検索できない指摘を検索で済ませないこと。ここを混ぜると、どちらも取りこぼします。

私が落としたのは、検索できる種類の指摘でした。だから防げたはずのものでした。

置き換えのときは、もっと危ない

消すだけでなく、別の語に置き換えるときは、さらに一段あります。

旧社名を新社名に変える、旧制度名を新制度名に変える。このとき確かめるのは2つです。

1. 旧い語で検索して、0件   ← 残っていないか
2. 新しい語で検索して、想定した件数   ← 入れすぎていないか

2つ目を飛ばしがちです。一括置換は、見出しの中や、本来変えてはいけない引用部分まで書き換えます。置換した件数が想定より多いときは、どこかで余計に置き換えています。

月曜に、1つだけ

いま手元に、レビューを1周して「直しました」となっている資料があれば、開いてください。

指摘の中で、検索できる語を1つ選んで、検索してください。

0件なら、それで終わりです。1件でも出てきたら、その資料に限った話ではありません。同じ手順で作ったほかの資料にも、同じ形で残っています。

「直した」は、直した本人の実感です。「0件だった」は、記録に残る事実です。通すかどうかを決めるのは、後者のほうです。


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