部下に資料を1本任せます。締切は金曜です。
水曜になっても、何も上がってきません。木曜の朝に「どうなっている?」と聞くと、「いま作っています」と返ってきます。
夕方になって不安になり、こう言います。
「あとはこっちでやるから、途中まででいいよ」
その晩、上司は自分で資料を仕上げます。
引き取りたくなるのは、途中が見えないから
このとき上司が心配しているのは、部下の力量そのものとは限りません。
心配しているのは、たいてい次のどれかです。
- 方向がずれていても、金曜まで分からない
- ずれていたら、直す時間が残っていない
- 締切に間に合わなかったら、謝るのは自分だ
どれも、途中の状態が見えないことから来ている場合が多いように思います。見えていれば、ずれていても水曜のうちに直しやすくなります。見えないので、最後の1日で全部を確かめることになり、間に合わない気がして引き取ります。
部下の側から見ると、事情は違って見えます。
作っている途中のものを見せるのは、怖いと感じる人もいます。「まだ途中なので」と出さずにいるうちに、木曜になります。黙っているのは、怠けているからではなく、未完成を見せてよいと言われていないからということがあります。
引き取りのあとに、判断が戻ってくる

一度引き取れば、その資料は間に合うかもしれません。困るのは、その次です。
途中で引き取られた部下は、こう受け取りがちです。
途中まで作っても、最後は上司が直す
→ 自分で決めずに、上司の判断を待ったほうが早い
次に何かを任されたとき、部下は早い段階で手を止め、「これでいいですか」と聞きに来るようになることがあります。聞かれた上司は答えます。また聞かれます。
任せたはずの仕事の判断が、少しずつ上司の机に戻ってきます。上司が「最近の若手は自分で決めない」と感じたとき、その形を作ったのは、以前の引き取りかもしれません。
任せるときに、途中で1回見せてもらう時点を決める

引き取らずに済ませるには、部下を信じて待つ、では足りません。途中が見えない不安は、気持ちでは消えないからです。
任せるときに、途中で1回見せてもらう時点を決めておきます。
金曜締切の資料なら、たとえばこう伝えます。
水曜の夕方に、使う表の枠と、最初の1ページだけ見せてください。表の中身は空で構いません。
ポイントは2つです。
1つ目は、見せてもらうものを「途中の形」で指定することです。「進んでいる?」と聞くと、部下は進み具合を言葉で答えます。言葉では、ずれているかどうかは分かりません。表の枠、最初の1ページ、図の下書きのように、物として見られるものを指定します。
2つ目は、中身は空でよい、と先に言うことです。未完成でよいと言われていないと、部下は見せられる形になるまで手元に置きがちです。空でよいと言われれば、早い段階の、まだ直しやすいものが出てきます。
水曜に表の枠を見て、方向がずれていれば、その場で一言伝えます。
「3つ目の表は要らない。代わりに、費用の比較を入れてください」
直す範囲は表1つ分です。金曜の前の晩に、全部を作り直さずに済みます。
途中で見せてもらっても、ずれていたとき
水曜に見せてもらった時点で、大きくずれていることもあります。
そのときも、引き取る前に一度だけ、どこを直すかを伝えて、部下に直してもらいます。直す時間が足りないなら、締切を動かせないかを、依頼元に確かめるのは上司の仕事です。
それでも間に合わないときに、初めて引き取ります。そのときは、何が足りなかったのかを、引き取った後で1行だけ部下に伝えてください。理由が分からないまま引き取られると、部下には「途中で取られた」という記憶が残りやすくなります。
月曜に、1つだけ
いま部下に任せている仕事を1つ選んで、こう伝えてください。
「締切の2日前に、途中のものを見せてください。空欄があっても構いません」
見せてもらったら、ずれているところを1つだけ伝えます。直すのは、部下に任せたままにします。
業務のAI化、どこから始めるか迷ったら
業務ドックが、御社の業務を1件ずつ診てAI化・標準化の優先順位を設計します。まずは無料相談、または業務AI化の無料診断からどうぞ。



コメント