「同じことを2回聞いたら、違う答えが返ってきました。これでは業務に使えません」
AIを試した現場から、よく出る声です。お客様への回答文、社内の問い合わせへの返事、申請の可否の判断。毎回違うものが出てくるなら、怖くて任せられない。もっともな感覚です。
ただ、2つの答えを並べて読むと、違っているのが言い回しだけのことがよくあります。逆に、判断そのものが割れているなら、原因はAIより手前にあることが多いです。
違いは2種類ある
2つの答えを横に並べて、違っている箇所に印を付けます。印は2種類に分かれます。
・言い回しの違い … 敬語の度合い、順番、例の出し方、文の長さ
・判断の違い … 可か不可か、金額、期限、案内する窓口
言い回しの違いは、人が書いても起きます。同じ問い合わせに、担当者3人がまったく同じ文面で返すことは少ないはずです。それでも業務が回っているのは、判断が揃っているからです。
まず困るのは、判断の違いです。「使えない」と感じたときは、どちらの違いなのかを確かめます。判断が合っていて言い回しだけが違うなら、使えない理由にはなりにくいです。お客様に出す文面のトーンは、これまでどおり人が最後に読んで整えます。
判断が割れるとき、AIに渡しているもの

判断まで割れているときは、AIに何を渡しているかを見ます。多いのは次の形です。
| 渡しているもの | 起きること |
|---|---|
| 問い合わせの文面だけ | AIが一般的な考え方で埋める。埋め方は毎回少しずつ違う |
| 規程を丸ごと | 該当しそうな条文が複数あると、どれを使うかが割れる |
| 「適切に判断して」という指示 | 何が適切かの基準が無いので、そのつど決め直す |
どれも、判断の基準が書かれていないという点で同じです。基準が無いところでは、AIはもっともらしい答えを毎回作り直します。毎回作り直すので、毎回少しずつ違います。
これは人に頼むときも同じです。新しく来た担当者に「いい感じに返しておいて」と言えば、日によって返事は変わります。ベテランの答えが揃っていることが多いのは、基準を頭の中に持っているからです。
渡すのは、判断の表
基準は、文章より表にすると渡しやすくなります。たとえば、経費の事前申請の問い合わせなら、次のような形です。
| 条件 | 判断 | 案内する先 |
|---|---|---|
| 1回5万円未満、出張以外 | 事前申請は不要 | 事後に精算システムへ |
| 1回5万円以上 | 事前申請が必要 | 部長の承認後、経理へ |
| 海外出張 | 金額によらず事前申請が必要 | 総務の出張担当へ |
| 上のどれにも当たらない | 判断しない | 経理の窓口へ回す |
この表の金額や窓口は説明のための例です。自分の職場の規程に合わせて入れ替えてください。
大事なのは最後の行です。表に当たらないときは、判断せずに人へ回すと書いておきます。この行が無いと、AIは表の外でも答えを作ろうとします。判断が割れるのは、たいていこの「表の外」です。
揃ったかどうかを確かめる

表を渡したら、同じ問い合わせを5回聞いて、判断の列だけを見ます。
問い合わせ: 来週の大阪出張、新幹線と宿で合計4万円です。申請は要りますか
1回目 不要(事後精算)
2回目 不要(事後精算)
3回目 要る(出張のため) ← 割れた
4回目 不要(事後精算)
5回目 不要(事後精算)
5回とも同じ判断なら、この問い合わせについては揃ったとみなします。
割れた回があれば、まず表のあいまいな行を探します。この例なら、原因の候補は1行目の「出張以外」です。国内出張の扱いが書かれていません。国内出張の行を1つ足して、もう一度5回聞きます。それでも割れるなら、表以外の渡し方も見直します。
直すのはAIへの言い方ではなく、表のほうです。言い方を工夫して揃えても、表に穴が残っていれば、別の問い合わせでまた割れます。
表を作ると、人の側の割れも見える
表を作り始めると、別のことが分かります。担当者によって、同じ問い合わせへの判断が違っていた、ということです。
「この場合はどうしていましたか」と3人に聞くと、答えが2つに分かれることがあります。そういう行が、表の中に出てくることがあります。これまでは、問い合わせた人が「前はこう言われた」と言わない限り、表に出なかった違いです。
AIの答えが割れたことがきっかけで、業務の基準の穴が見つかる。これは導入の失敗ではなく、導入して早い段階で得られることがある成果です。
今日、1つだけやる
「AIの答えが違った」という例を、1つ手元に用意してください。
2つの答えを並べて、判断が違っている箇所だけに印を付けます。
印が付かなければ、違いは言い回しです。文面は人が最後に読んで整える前提で、業務に使うかどうかは判断が合っているかで考えられます。
印が付いたら、その判断に使う基準を表の1行にして書きます。
条件 1回5万円以上
判断 事前申請が必要
案内する先 部長の承認後、経理へ
中身は、自分の業務のものに入れ替えてください。1行書けたら、「どれにも当たらないときは人へ回す」の行を最後に足して、AIに渡します。
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