AI導入の予算が取れません|効果が書けないのではなく、誰の時間かが書かれていない

企業でのAI活用

現場で試して、手応えがありました。全社に広げるために稟議を上げます。

通りません。差し戻しの理由は、たいてい「効果が不明確」です。

効果は書いてあることが多い

差し戻された稟議を見ると、効果はきちんと書かれています。

・月100時間の作業削減
・処理時間が1件あたり20分から3分へ
・年間で約400万円相当の工数削減

数字はあります。それでも通りません。

理由は、この3行のどれも、会社の数字が変わる形になっていないからです。

工数が減っても、人が減らなければ費用は減りません。決裁者はそこを見ています。

「相当」は、金額ではない

「相当」は、金額ではない

いちばん止まるのがこの言葉です。

「400万円相当」と書くとき、たいてい中身はこうなっています。

100時間 × 12か月 × 時間単価3,300円 = 約400万円

計算は合っています。合っているのに、来年の費用はどこも減りません。

給与は時間で払っていないので、100時間空いても支出は変わりません。決裁者はそれを知っているので、この行を読んだ時点で「効果なし」と判断します。

稟議の書き方 決裁者の読み方
相当額 「400万円相当の工数削減」 支出は変わらない
残業 「残業が月8時間減る」 残業代が減る=実際に減る
外注 「委託していた入力作業が不要になる」 委託費が減る=実際に減る
増員 「来期の増員1名が不要になる」 採用しない=実際に減る

下の3つは金額です。いちばん上だけが金額ではありません。

誰の時間かを書く

削減量を書くときに抜けるのが、その時間の持ち主です。

✕ 月100時間の削減
◯ 経理3名の月次処理から、1人あたり月11時間

持ち主が書かれると、決裁者はその先を考えられます。11時間空いた経理の担当者が、次に何をするのか。

ここが空欄のままだと、「空いた時間で何をするか決まっていないもの」に投資する判断になります。決まっていない投資は、たいてい保留されます。

空いた後を1行で書く

空いた後を1行で書く

必要なのは、細かい計画ではありません。1行で足ります。

1. 残業が減る ……… 金額で書ける。いちばん強い
2. 他の仕事に回す … 回す先の仕事を名指しする
3. 増員しない …… 来期の採用計画に載っているものを指す

2を書くときは、回す先を必ず名指ししてください。「より付加価値の高い業務へ」と書くと、読んだ側には空欄と同じに見えます。

通る稟議は、たいてい小さい

もうひとつ、よくある詰まり方があります。

全社で使う前提で、最初から大きな金額を出しています。

金額が大きいと、判断する人が上がります。上がった先の人は現場の手応えを見ていないので、書面だけで判断します。書面だけで通る材料は、まだ手元にありません。

✕ 全社200名分のライセンス + 構築費 …… 決裁者が役員以上になる
◯ 1部署15名・3か月 …………………… 部長決裁で済むことがある

3か月後に残業の実績が出れば、次は金額で書けます。大きく1回やるより、小さく始めて実績を持ってから上げるほうが速いことが多いです。

今日、稟議を1行だけ直す

差し戻された稟議が手元にあるなら、「○○円相当」と書いた行を探してください。

その行の下に、誰の時間が何時間空くかを書き足す。

金額に換算しなくて構いません。持ち主の名前が入った時点で、決裁者は判断できる状態になります。


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