AIで楽になったはずなのに、効果を聞かれて答えられません|始める前に、いまの数字を1つだけ書き留めておく

企業でのAI活用

「AIを使うようになってから、だいぶ楽になりました」

(この記事に出てくる業務や数字は、説明のための例です)

現場からこういう声が出るのは、うれしいことです。ところが、上司や経営から「で、どれくらい変わったの」と聞かれると、答えに詰まることがあります。

「体感では半分くらい」「前はもっと残業していた気がする」。言っていることは本当でも、相手が判断に使える形にはなっていません。次の予算や、ほかの部署への展開の話になったとき、ここで止まりがちです。

効果の有無とは別に、比べる元の数字が残っていないのかもしれません。

後から思い出す数字は、あてにしにくい

導入して半年たってから「前は何時間かかっていましたか」と聞くと、たいていは何かしらの数字が返ってきます。ただ、その数字は思い出したものです。

・大変だった月のことを、いつものことのように覚えている
・自分が手を動かした時間だけを数えて、待っていた時間を入れていない
・そもそも、前のやり方を細かく覚えていない

悪気はありません。記憶に頼ると、こうしたずれが入り込みやすくなります。思い出した数字と、いま測った数字を並べても、差のどこまでがAIの分なのかは分かりにくくなります。

測るのは、1業務の1つの数字で足りる

測るのは、1業務の1つの数字で足りる

「効果を測る」と聞くと、全業務の作業時間を記録する仕組みを思い浮かべるかもしれません。そこまでは要りません。始める日に、AIを使う予定の業務を1つ選び、次のどれか1つを書き留めておけば足ります。

書き留める数字(例) 取り方
1件あたりにかかった時間 次の1件を、開始と終了の時刻をメモしながらやってみる
手元に溜まっている件数 今日の時点で、未処理が何件あるかを数える
差し戻し・やり直しの回数 先月分の記録やメールから数える
頼んでから戻ってくるまでの日数 直近の5件くらいで、依頼日と完了日を並べる

どれを選ぶかは、上司が何を気にしているかで決めます。人手が足りないと言われている部署なら時間、ミスが問題になっているなら差し戻しの回数、というように。

1件だと偶然のばらつきが大きいので、できれば3件ほど測って真ん中の値を書いておきます。測り方を決めようとして時間がたつうちに、AIの利用が先に始まってしまうこともあります。

一緒に書いておくのは、そのときの条件

一緒に書いておくのは、そのときの条件

数字の横に、そのときの条件を1行添えておきます。

業務       取引先からの見積依頼への一次回答
数字       1件あたり 約40分(3件測った真ん中の値)
条件       担当2名・繁忙期ではない・テンプレートは無し

この例の中身は説明のためのものです。自分の業務に合わせて入れ替えてください。

条件を残すのは、半年後に「人が増えたから早くなったのでは」「閑散期だっただけでは」と聞かれたときに答えるためです。比べる2つの数字の条件がそろっていれば、差の理由を説明しやすくなります。慣れや業務量の変化など、ほかの要因が残る場合は、そのことも一緒に書いておきます。

半年後に、同じ測り方でもう1回

導入から時間がたったら、同じ業務の同じ数字を、同じ取り方でもう1回測ります。

並べてみて、思ったほど変わっていないこともあります。それも大事な結果です。どの業務ではAIが効いて、どの業務では効かなかったかが分かれば、次に手を付ける業務を選ぶ材料になります。

今日、1つだけやる

これからAIを使い始める業務を、1つ思い浮かべてください。すでに使っている業務なら、導入前の数字はもう取れませんが、いまの数字が半年後の比較の元になります。

その業務の「いまの数字」を1つ、日付と条件と一緒にメモに残します。

置き場所は、半年後の自分が見つけられるところにしてください。それだけで、次に「どれくらい変わったの」と聞かれたときに、比べて答えやすくなります。


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