「AIに何度も直してもらっているうちに、どれがいちばん良かったのか分からなくなりました」
(この記事に出てくる文面や場面は、説明のための例です)
社内向けの案内文、取引先へのお詫びのメール、会議で配る説明資料。AIに下書きを作ってもらい、読んでみると、どこか物足りない。そこで「もう少し良くして」と頼みます。
返ってきた文章は、たしかに少し変わっています。言い回しが丁寧になり、段落が入れ替わり、最後に一文が足されている。ただ、良くなったのかと聞かれると答えに詰まる。もう一度頼むと、今度は短くなり、さっき気に入っていた表現が消えています。
これを繰り返しているうちに、30分、1時間とたっていきます。自分で書いたほうが早かった、という感想になりがちです。
「良くして」には、方向が入っていない
人に文章の手直しを頼むときは、多くの場合、相手がこちらの意図をある程度くみ取ってくれます。上司の好み、読み手が誰か、前回どこを直されたか。言わなくても伝わっている前提があります。
AIへの「もっと良くして」には、その前提がありません。
・誰が読むのか → 伝わっていない
・どこが物足りないのか → 伝わっていない
・何を変えてはいけないか → 伝わっていない
方向が無いまま「良く」と言われると、AIは毎回、それらしい直しを別々の方向に加えます。丁寧にする、短くする、具体例を足す、構成を変える。どれも間違いではありません。ただ、こちらが欲しかった直しに当たるかどうかは、運に近くなります。
さらに困るのは、前の版で良かった部分まで変わってしまうことです。直すたびに、別の場所が崩れる。往復が終わらないのは、この形になっていることが多いように思います。
直してほしい点を、1つだけ名指しする

頼み方を変えます。全体を良くしてもらうのではなく、気になった1か所を指して、どう変えたいかを書きます。
| いつもの頼み方 | 名指しする頼み方(例) |
|---|---|
| もっと良くして | 2段落目の理由が長いので、3行以内に縮めてください |
| もう少し分かりやすく | 「連携」という言葉を、部署の外の人にも分かる言い方に変えてください |
| もっと丁寧に | お詫びの一文を冒頭に移してください。ほかの部分は変えないでください |
文面は例です。自分の文章に合わせて入れ替えてください。
ポイントは2つあります。1つは、一度に頼む直しを1つに絞ること。複数を一度に頼むと、どの直しでどこが変わったのかを追いにくくなります。もう1つは、変えてほしくない部分を書くこと。「ほかは変えないでください」の一言があるだけで、良かった部分が消えにくくなります。
物足りなさの理由が言葉にならないときは、AIに挙げてもらう
とはいえ、どこが物足りないのか自分でも分からない、ということもあります。そういうときは、直してもらう前に、まず問題点を挙げてもらいます。
この文章を、○○(読み手)が読んだときに引っかかりそうな点を、3つまで挙げてください。まだ直さないでください
挙がった点を見て、直してほしいものだけを選びます。全部を直す必要はありません。選んだ1つを、上の表のように名指しして頼みます。
「まだ直さないでください」を入れておくのは、問題点の指摘と直しを分けるためです。一緒にすると、また全体が書き換わった版が返ってきます。
頼む前に、終わりの条件を書いておく

往復が長引くもう1つの理由は、どうなったら終わりかが決まっていないことです。終わりが無いと、読み返すたびに新しい気になる点が見つかり、また頼むことになります。
始める前に、次の2つを決めておきます。
・この文章で、読み手にしてほしいことは何か(例:金曜までに出欠を返してもらう)
・直すのは何回までにするか(例:3回まで)
1つ目は、文章の良し悪しを判断する物差しになります。読み手が出欠を返せる文面になっていれば、言い回しに多少の好みが残っていても、そこで終えてよいはずです。
2つ目は、時間の上限です。回数を決めておくと、残りの回数で何を優先して直すかを考えるようになります。上限に達しても気になる点が残るなら、その部分は自分で手を入れるほうが早いことが多いでしょう。
良かった版は、その場で残しておく
もう1つ、小さいけれど効く習慣があります。「これは良い」と思った版が出たら、その時点で別の場所に貼っておくことです。
AIとのやり取りは、画面をさかのぼれば前の版も見られます。ただ、往復が10回を超えると、どれが良かったのかを探すだけで手間になります。良かった版を残しておけば、次の直しで崩れても、そこへ戻れます。
今日、1つだけやる
次にAIの文章を直してもらうとき、「もっと良くして」と打つ前に、こう書いてみてください。
「○○の部分を、△△に変えてください。ほかは変えないでください」
直す場所を1つ指して、変えない部分を守る。それだけで、往復の回数と、終わったあとの「結局どれが良かったのか」という迷いが減ります。
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